2009年10月19日

「いかのおすし」と小杉・山岸論文

昨日、oikaさんよりコメントをいただき、以前に「いかのおすし」は子どもの安全を脅かす?という記事で引用した社会心理学実験に関して、「『安心社会から信頼社会へ』(中公新書)あたりをご参照いただけるとわかりやすいかと思います。」とご教示いただきました。この本の著者である山岸俊男さんという名前を手がかりに探した結果、この実験と思われる報告が「一般的信頼と信頼性判断」(小杉素子・山岸俊男 1998 『心理学研究』 69(5), 349-357.)という論文に掲載されていることがわかりました。これは山岸教授のWebサイトからダウンロードできますので、ちょっと読んでみました。

これによると、1970年代には「信じやすい人の方が騙されやすい」という研究結果が示されていたのが、1980年代に入って必ずしもそうではないという実験結果が出てきたところ、1990年代にこの論文の研究者らの実験で、「信じやすい人の方が騙されにくい」という結果が出たということのようです。

学問としてこの論文は興味深いものですが、ただし、この結果を即座に「いかのおすし」にあてはめて「"いかのおすし"的教育はかえって子どもを危険にさらす」とまで言いきってしまうのは無理があるのかなと感じました。せいぜいが、そういう「可能性がある」程度を言うのが関の山でしょう。それでもちょっと引っ張り過ぎかなという感じです。

というのは、この実験で用いられた「信頼」の尺度は、必ずしも想定される「連れ去り犯」の行動や特徴とは重ならないからです。さらに、実験の被験者となったのは大学生であり、子どもとは違います。後天的な社会的行動を獲得した後の大学生と、先天的な本能の部分がまだまだ大きい子どもの行動ではかなりちがってくるでしょう。

さらに、この信じやすさ、疑いやすさは、むしろ相手の行動を分析する能力の差異によって後付け的にできたものではないかと推論されていることが重要です。これによれば、騙されやすさの方が先にあるわけですから、教育によって疑うことを植え付けることが必ずしもマイナスにはならないということになります。

ということで、詳細を知ることで「いかのおすし」批判の根拠の可能性を一つ失ったわけですが、しかし、こういった方面の社会心理学の研究が、何か手がかりになるような感覚は残りました。ひとつの取っ掛かりが見つかったので、この方向で、もう少しこの方面でいろいろな研究をあさってみようかと思っています。

posted by 松本 at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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