2009年10月17日

アメリカの「いかのおすし」

「いかのおすし」は、日本だけの現象なのでしょうか?
日本は、犯罪の発生件数だけをとるならば、世界でも有数の安全な国です。一方、アメリカ合衆国は、犯罪が多発することで知られています。アメリカなら、日本どころではない「子どものための安全教育」が行われているに違いありません。

ところが、ちょっと調べたぐらいでは、これはなかなか発見できませんでした。こういったものは、実際に生活してはじめて体験するものなのでしょう。実際、私は「いかのおすし」を、子どもが小学校に入学するまで知りませんでした。知らないものは調べようもないのです。

それでもようやく発見しました。アメリカ合衆国だけでなく、イギリス、オーストラリアなど英語圏で広く用いられている標語、「stranger danger」です。

「stranger danger」は、たぶん「知らない人に気をつけて」ぐらいに訳せばいいのだろうと思いますが、もうちょっと強く危機を訴えているような感じです。Wikipediaに詳しい解説がありました。

http://en.wikipedia.org/wiki/Stranger_danger

部分的に抄訳すれば、こんな感じでしょうか。

Stranger dangerは、「知らない人」による子どもたちへの危険と考えられているものを説明したものである。このフレーズは、未知の大人によってもたらされる悪意による危険に関連するさまざまな懸念を要約したものである。このフレーズには幅広い用いられ方が見られ、多くの子どもたちが成人までに耳にするものである。子どもがこのアドバイスを覚えるのを助けるため、多くの本、映画、広報が用いられてきている。この概念は、ほとんどの子どもの誘拐や危害が知らない人によるものではなく、子どもがよく知っている人や血縁関係者によるものであるという事実を無視しているとして批判されてきている。


「stranger danger」は、まさに英語版の「いかのおすし」です。その歴史は古く、少なくとも1970年代に遡るようです。ただし、「いかのおすし」と大きく異なるのは、一方でそれを広めようとする人々がいるにもかかわらず、「stranger dangerなんて博物館行きだ!」と批判する人々も少なくないということです。日本で「いかのおすし」がおかしいという声が(このブログ以外)ほとんど聞かれないのと実に対照的です。

その批判の内容は、上記のように子どもが犠牲者になる犯罪が「知らない人」によるものより「知っている人」による方が多いということを踏まえたものの他、Wikipediaの同じ記事には次のように述べられています。
知らない人という形をとった危険の可能性を繰り返し子どもに注意するプロセスは、潜在的な危険を誇張したものであり、不信感を不必要に広めるものだとしても批判されてきている。特に、(一例をとれば)アメリカ合衆国では年間80万人の子どもが少なくとも一時的には行方不明になっているが、「古典的な知らない人による誘拐犠牲者とみられるのは」わずか115に過ぎないという事実を考えれば、この批判はなおさらである。その他の理由によって子どもが危機にあるような状況では、(援助を期待できる)知らない人を避けることは、それ自体が危険である。たとえば、「さらわれる」ことを怖れるあまり救援隊から隠れつづけた11歳のボーイスカウトの少年の事件などがそうである。


つまり、日本とは桁違いに「子どもの連れ去り犯罪」の多発しているアメリカ合衆国でさえ、「知らない人」による危険性は誇張されていると批判されているのです。そして、「不信感を不必要に広める」弊害もはっきりと指摘されています。

こういった実状の一端をWikipediaという限られた窓口から覗くだけでも、「いかのおすし」を無批判に受け入れる日本の現状がいかに異常であるかということがよくわかります。怖いのは、「いかのおすし」そのものよりも、批判が一切封じられているという事実かもしれません。すべての人がおかしいと思う必要はありません。「やっぱり"いかのおすし"は必要だよ」という人が多数でもかまわないでしょう。けれど、私以外にはほとんど誰も「"いかのおすし"はおかしい」と言わないのはおかしいではありませんか。

何かこれには、私の気づかない原因でもあるのでしょうか。まだまだ「いかのおすし」を巡る謎は解明されていないのかもしれません。

posted by 松本 at 00:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 参考資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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