2009年10月11日

幼児教育の「いかのおすし」への視線

私は「いかのおすし」に小学校で初めて出会ったのですが、「いかのおすし」キャンペーンは実に広く行われていて、小学校での展開はその一部に過ぎないようです。具体的には、幼稚園、保育園で「いかのおすし」キャンペーンが行われた報告が、検索結果には数多くかかってきます。

私が暗澹とした気持ちになるのは、そういった報告のほとんどが、「いかのおすし」に何ら疑問をもたず、「自分たちは頑張っているのだ」「子どもたちはよく聞いていた」というような「いかのおすしは当然」という立場に立ったものだということです。そこには、「与えられたものをこなすのが自分の仕事だ」という、現代の誤ったプロフェッショナル意識が見えます。本来のプロフェッショナルな意識とは、専門性にもとづいた職務に忠実であることであり、組織に忠実であることではありません。教育の現場では、子どもの健全な成長に尽くすことが職務です。上長からの指令にしたがうことは、組織に忠実なことですが、これが職務に忠実であることと必ずしも合致するとは限らないのです。

「いかのおすし」を推進することが子どもにどのような影響を与えるかを専門職として検討することが本当の意味でのプロだと思うのですが、そんなことを考えている形跡は、少なくともWeb上を少し探したぐらいでは、出てきません。それでも、現場レベルというよりはもう少し上のレベルで「いかのおすし」に疑問を呈している幼稚園関係者のエッセイを見つけましたので、資料としてあげておきます。

広島県のある幼稚園で保護者に配布する「おたより」をWebで公開しているものらしく、そのエッセイにある一文です。
小学校の入学式に行ってきました。毎年のことでずが、 校長先生の大切なお話しに「いかのおすし」と呼ばれるものが あります。学校生活の第一歩でこのような話が例外なく求められていることが日本社会が負っている問題だと思います。 見ず知らずの人にはついていかない。大人は必ずしも信頼で きるものではないのだから。子ども達に大人とは無条件に信 頼できる存在。大人になることは素晴らしいことだと子ども 達に胸を張って言える社会にしたいものですね。不信感にあ ふれた人間関係は、子どもの成長に何も良いものを産みません。 幼稚園は、小さな子ども達が初めて母親や父親の保護の手 を離れて保育者という大人の保護と見ず知らずの子ども達の 集団の中に身をおかなければなりません。ここで人間への信 頼を獲得し、仲間とやりとげる面白さ、協力して歩む素晴ら しさを獲得していくのです。その為にも、登園までの毎日を しっかりと子どもと手をつないで歩んできて欲しいと思いま す。そして幼稚園に来ると、まるで忍者のようにすっと消えるように、幼稚園への信頼の思いの雰囲気を十分に伝えなが ら。保護者が子ども達に不安をあおるようにしないで下さい。 人間関係はとてもとても素晴らしいのだと。

幼稚園での「いかのおすし」ではなく、小学校入学と同時に実施される「いかのおすし」に対する幼稚園関係者としての疑問です。この記述からは、「『いかのおすし』は子どもにの成長に悪影響を与える」という強い思いが伺えます。全くその通りだと思います。「人間関係はとてもとても素晴らしい」。それこそがあらゆる教育の原点であると思います。

このような考え方から、「いかのおすし」をはねのけられている幼稚園・保育園も多いことでしょう。しかし、小学校は管轄外となって、新入学の子どもが「いかのおすし」を強制されるのを防ぐことはできません。一歩踏み出す必要がどうしてもあるのです。

「自分のところだけはそういうことを受けつけない」というのは、プロフェッショナルとして職務に忠実な行為でしょう。しかし、それだけでは最後まで職務に忠実であり通せないと思うのです。自分の管轄以外にも積極的に働きかけ、そういう悪習をやめさせるように動いてこそ、本当の専門職ではないでしょうか。大変なことだとは思いますし、なかなかできることではありません。けれど、そんな専門家の出現を願ってやみません。

教育関係ではありませんが、福祉関係で、現行の「不審者」に対する社会の視点がおかしいと考えられているところもあるようです(たとえばこちらのブログ)。あらゆる教育関係者、福祉関係者は、自分の学校や施設内のことだけでなく、広く社会に目を向けて、本当の意味での教育・福祉の実現を目指していかなければならないのではないかと思うのです。

posted by 松本 at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 参考資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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