2009年10月06日

「不審者情報」の実際

警察は、積極的に「不審者情報」を流します。それが仕事ということになっているのだから咎め立てをすべきではないのかもしれませんが、いたずらに不安を煽るような気がしないでもありません。しかし、「不審者情報」とはどんなものかをしっかり把握すれば、「不審者情報」がたびたび寄せられるからといって不安がることはないのかもしれません。

たとえば、鹿児島県警は「防災・安全・安心メール」を登録者に配信していますが、その内容は「鹿児島 犯罪情報 ライブドア支局」で見ることができます。たとえば今年の8月20日には、こんな情報が配信されています。

《鹿児島市で声かけ事案》【男の特徴】60歳位,頭に白色タオルを巻く,白色乗用車使用【日時】8/18(火)午後6時頃【場所】西伊敷3丁目の路上【内容】帰宅中の小学生男児が,白色の乗用車に乗った男から「ちょっとおいで」と声をかけられた事案。男児はすぐに近くの大人に知らせました。子どもたちには不審者への対応と併せて,不審車両のナンバーを覚えておくことも指導してください。


この文面を見れば、実に怪しげです。こんな「不審者」がウロウロしているのでは、落ち着いて暮らせないような気になります。けれど翌日21日には、こんな訂正が入っています。

《声かけ事案の解決》8/20に配信しました鹿児島市西伊敷3丁目における小学生男児への声かけ事案につきましては,車のナンバー等から,知人による善意の声かけと判明しました。御協力ありがとうございました。今後も,子どもたちには,日頃から防犯意識を持って行動すること,ナンバー等を覚えておいて大人に知らせることを指導してください。


「不審者」は、単なる知人であったわけです。

つまり、「不審者」は、「犯罪者」もしくは「犯罪の隙を伺っている悪意をもった者」とイコールではないのです。「不審者」の中にそんな人々もいくらか含まれている可能性はありますが、そうでない可能性も高いわけです。

この鹿児島県警の防犯メールでは、上記のように「結局は知人でした」というような訂正が入ることは多くありません。むしろ、「不審者」は「不審者」のまま解決されないケースがほとんどでしょう。であっても、だからといってそれらの中に知人や善意の人が相当数含まれていなかったとは考えにくいわけです。

たとえば、某巨大掲示板では、「
「コンビニを教えて」と聞いただけで犯罪になる時代がやってきました
」として、大阪府警の同様な「不審者情報」に関するスレッドが立っているようです。この「不審者」も、単に道を尋ねただけという可能性が高いわけです。

「不審者」に定義はありません。通報者が「不審者だ」と思えば、それ以外に何の根拠もなく、「不審者情報」は発生します。1週間ほど前に私は近所を車で走っていたときに、息子の友だちのお姉さん(小学校6年生)とすれ違いました。車の窓越しに手を振ったとき、視力の低い彼女は私の顔を見分けられず、不審な顔をしていました。こんなふうにして不審者情報がまたひとつ発生したかもしれません。

警察がこういった「不審者情報」を受理するのも、それに前向きに取り組むのも、それはそれでけっこうなことでしょう。また、その情報を希望者に流すのも、決してそれ自体は悪いことだとは思いません。ただ、こうやって累積する根拠のあやふやな「不審者情報」が統計となり、「これだけ多数の不審者情報が寄せられている」「不審者は年々増えている」というような解釈を引き起こすのは問題です。それは、「不審者」の実態を反映しないからです。

「不審者」は、「犯罪者」ではありません。「不審者」の増加は、「犯罪」の増加ではないのです。むしろ「不審者」の増加は、通報者の不安意識をより強く反映したものであるように思えます。コンビニへの道を聞いただけで通報されるのは異常です。そんな異常な行動を異常とも思わないほどに、人々は不安に怯えているのでしょうか。そんな不安は、どこから生まれたのでしょうか。

「いかのおすし」的教育は、その責任の一旦を担っていないでしょうか。「人を見たら泥棒と思え」という教えは、どんどんと「不審者」を増やしているのではないでしょうか。

私たちはみな、安心して住める社会を願っているのだと思います。「いかのおすし」はそんな社会の実現にプラスに作用しているのかマイナスに作用しているのか、冷静に検証してみる必要があるのではないでしょうか。
posted by 松本 at 09:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 参考資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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